Fores-Try

「森づくりはもっと自由でいい!!」林業・森林研究先進国のドイツで学んだ経験をもとに,森林・林業の可能性や魅力を発信していきます。

未分類 森林・林業 混交林

森林研究の最前線③ ~根による樹種間の助け合い~

投稿日:

 

今回も根の話を深掘りしていきましょう。

 

前回の記事では,根による樹種間の「資源の分け合い」に着目しました。

 

異なる樹木同士が競争を減らして共生するには,根の「空間」,「時間」,「養分」のすみわけがポイントでした。

 

一方で,競争の緩和だけでなく,ある樹種の根の存在が他の樹種の成長を促進する効果もあると考えられています。

 

根による樹種間の助け合いのメカニズムとして,「資源の汲み上げ」と「根の滲出物」があります。

 

「資源の汲み上げ」とは,根がポンプのように地下から水や養分を吸い上げ,その資源を地上・地表に放出する現象です。

 

実際に,樹木の根が深層の湿った土壌から水をくみ上げ,乾燥した地表付近の根から放水する現象が知られています1

 

また,土壌深層で根が吸収した養分は葉へ送られ,最終的に落ち葉として養分の一部が土壌へと還ります。

 

このように土壌の深層から浅層・地表へと汲み上げられた水分や養分は,共存する樹木の生育環境も改善する可能性があります2

 

実際に,水分量が多い土壌の根が乾燥した土壌へ水分を汲み上げ・放出し,その水分を他の樹木が利用することが報告されています3

 

養分に着目した研究では,森林の樹種の多様性が高いと,葉へ蓄積される養分含量が増えることが観測されています4

 

 

「根の滲出物」とは,根から放出される糖やアミノ酸などを含んだ液体です。

 

滲出物は土壌微生物の活動を活性化し,周辺土壌の落ち葉をはじめとする有機物の分解を促進します。

 

植物の種類によって根の滲出物の成分が異なり,中には土壌の鉱物を風化させることで土壌の養分環境を改善させ,共生する他の植物の成長を促進することがあります。

 

例えば,ソラマメとトウモロコシを混ぜて育てた実験では,ソラマメの根の滲出液が土壌中の植物が利用可能なリンの量を増やし,トウモロコシの成長を促進したことが報告されています5

 

一方,樹木を対象にした実証実験は十分ではありませんが,ソラマメとトウモロコシの研究結果と同じような結果が樹木にも期待できるかもしれません。

 

 

おわりに

 

今回は,「資源の汲み上げ」と「根の滲出物」という観点から,根による樹種間の助け合いのメカニズムに着目しました。

 

このような「樹種間の助け合い」を踏まえ,林業で異なる樹種をうまく混ぜて育てることができれば樹木の成長が促進されるかもしれません。

 

ただ,林業では樹木の成長だけではなく,樹木の質も大事です。

 

次回は,樹種間の振る舞いが樹木の材質にどのように影響するか見ていきましょう。

 

以上,“だい”でした。

 

参考:

  1. Caldwell, M. M. & Richards, J. H. Hydraulic lift: water efflux from upper roots improves effectiveness of water uptake by deep roots. Oecologia 79, 1–5 (1989).
  2. Rothe, A. & Binkley, D. Nutritional interactions in mixed species forests: a synthesis. Canadian Journal of Forest Research 31, 1855–1870 (2001).
  3. Hafner, B. D., Hesse, B. D. & Grams, T. E. E. Friendly neighbours: Hydraulic redistribution accounts for one quarter of water used by neighbouring drought stressed tree saplings. Plant Cell and Environment (2020). doi:10.1111/pce.13852
  4. Zeugin, F., Potvin, C., Jansa, J. & Scherer-Lorenzen, M. Is tree diversity an important driver for phosphorus and nitrogen acquisition of a young tropical plantation? Forest Ecology and Management 260, 1424–1433 (2010).
  5. Li, L. et al. Diversity enhances agricultural productivity via rhizosphere phosphorus facilitation on phosphorus-deficient soils. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 104, 11192–11196 (2007).

-未分類, 森林・林業, 混交林
-,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

関連記事

森林研究の最前線① ~木同士の相性とは?~

人間関係に相性ってありますよね。   いつも仲良くしている人,ケンカしがちな人…   例えば相性が良い人と仕事をすれば1+1以上の相乗効果が生まれて仕事がはかどったり。 &nbsp …

森林研究の最前線② ~樹種の相性と根のはたらき~

物事の全体像を見るには「目に見えない部分」を知ることが欠かせません。   例えば,「氷山の一角」という言葉があるように、氷山の水上の部分は全体のほんの一部です。   森林研究におけ …

森林研究の最前線⑤ ~混交林と樹木の本数密度~

  木を育てるには樹木間の競争のコントロールが欠かせません。   そして,競争のコントロールには樹木の本数を調整します。   森林管理作業で行われる間伐は,樹木を間引くこ …

森林研究の最前線④ ~樹種多様性と材質~

  「森林の樹木多様性が高いと森林の生産性も高まる」現象が報告されています(以前の関連記事)。   一方で,林業では森林の成長量だけでなく,樹木の材質も見ることが重要です。 &nb …

森林研究の最前線⑥~樹種の機能をはかる~

以前の記事では,単純林と比較して,多樹種が共存する混交林で森林の生産性が高まる現象を紹介しました(関連記事)。   生産性が高い混交林では樹種同士が競争を避け合い,時には,成長を促進し合うこ …

プロフィール

だい

「森づくりはもっと自由でいい!!」
これまでの単一種を植栽する人工林ではなく,複数種を植栽する混交林の可能性を研究するためドイツで博士課程留学中。
4年間国際研究プロジェクトに携わった経験をもとに,最新の研究をわかりやすく紹介しながら,木材生産と環境保全の両立を実現する混交林の可能性,ドイツ留学の体験談を発信していきます。


 

えいじ

東京生まれ。明治大学農学部卒、ドイツ・フライブルク大学とスウェーデン・SLUで森林学の修士号取得。
現在ドイツで現地就職目指して活動中。
Fores-Tryではブログ執筆に加え、SNS投稿も担当。
好きな木はイロハモミジ、嫌いなものはクモ。
趣味: 一人旅、スノボ、心理学、FX、YouTube