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スケーリング理論 生態学

生き物共通のルール?クライバーの法則

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世界中には多様な生物がいます。

 

2013年に発表された研究では,世界中に2~8百万種の生物が存在していると推定されています1

 

ところで,そのような多様な種に共通した“ルール”はあるのでしょうか?

 

このブログでは樹木に注目した話ばかりを紹介してきましたが,今回は樹木とその他の生き物の共通性を見ていきましょう。

 

 

呼吸速度は重さの3/4乗に比例する~クライバーの法則~

 

1932年,クライバーはネズミやウシなど様々な大きさの哺乳類の呼吸を測定し,呼吸速度が体重の3/4乗になることを発見しました2

 

ここで言う呼吸速度とは,酸素を取り込んで身体を動かすエネルギーを取り出し,その結果,体外へ排出される二酸化炭素の量や速さのことです。

 

同様に,樹木でも個体サイズが大きくなるにつれて呼吸速度が体重の3/4乗になることが報告されています3

 

この樹木に関する研究には日本の研究グループが大きく貢献しました。

 

動物の血管と植物の維管束の形の共通性が3/4乗則を説明?

 

なぜ呼吸速度は重さの3/4乗になるのでしょう?

 

この3/4乗則を説明する理論はWest,Brown,Enquistの三名の研究者によって提唱され,彼らの頭文字をとってWBE理論と呼ばれています4

 

この理論は生命体を維持する資源輸送ネットワークである動物の血管や植物の維管束系の形の共通性に着目しました。

 

ある図形の全体像とその一部分が相似になる図形のことをフラクタルといいますが,WBE理論では血管や維管束をフラクタルと仮定することにより3/4乗則を説明しました。

 

より詳しい説明については,日本生態学会誌の2013年の特集が大変参考になります。

 

一方,植物では呼吸速度と重さが必ずしも3/4乗にならない可能性も報告されており5,6,3/4乗則とWBE理論の正しさは今後も検証されていくでしょう。

 

おわりに

今回紹介した呼吸速度と体重の3/4乗則は,多種多様な生物の中に共通性を感じさせてくれます。

 

身の回りの生き物が自分たち人間と同じルールに従っているかもしれない。

 

そう思うと身の回りの生き物に親近感を感じます。

 

生物多様性の価値に気づくには,生き物の違いだけでなく,共通性にも目を向けることが重要かもしれません。

 

以上,”だい“でした。

 

参考:

  1. Costello, M. J., May, R. M. & Stork, N. E. Can we name earth’s species before they go extinct? Science 339, 413–416 (2013).
  2. Kleiber, M. Body size and metabolism. Hilgardia 6, 315–353 (1932).
  3. Mori, S. et al. Mixed-power scaling of whole-plant respiration from seedlings to giant trees. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 107, 1447–1451 (2010).
  4. West, G. B., Brown, J. H. & Enquist, B. J. A general model for the origin of allometric scaling laws in biology. Science 276, 122–126 (1997).
  5. Reich, P. B., Tjoelker, M. G., Machado, J. L. & Oleksyn, J. Universal scaling of respiratory metabolism, size and nitrogen in plants. Nature 439, 457–461 (2006).
  6. Glazier, D. S. A unifying explanation for diverse metabolic scaling in animals and plants. Biological Reviews 85, 111–138 (2010).

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プロフィール

だい

「森づくりはもっと自由でいい!!」
これまでの単一種を植栽する人工林ではなく,複数種を植栽する混交林の可能性を研究するためドイツで博士課程留学,2023年学位取得。
帰国後も混交林の実験的研究に従事。
7年間国際研究プロジェクトに携わった経験をもとに,最新の研究をわかりやすく紹介しながら,木材生産と環境保全の両立を実現する混交林の可能性,ドイツ留学の体験談を発信していきます。
ツイッター:https://twitter.com/dai_fores_try
学位論文:「Diversity-productivity relationships in young tree communities as influenced by fertilizer applications」


 

えいじ

東京生まれ。明治大学農学部卒、ドイツ・フライブルク大学とスウェーデン・SLUで森林学の修士号取得。
現在ドイツで現地就職目指して活動中。
Fores-Tryではブログ執筆に加え、SNS投稿も担当。
好きな木はイロハモミジ、嫌いなものはクモ。
趣味: 一人旅、スノボ、心理学、FX、YouTube