人間関係に相性ってありますよね。
いつも仲良くしている人,ケンカしがちな人…
例えば相性が良い人と仕事をすれば1+1以上の相乗効果が生まれて仕事がはかどったり。
異なる樹種を隣り合わせで植えた場合どんなことが起きるでしょうか?
種の組合せによっては,互いの種の成長が促進される場合や,
反対に資源の奪い合いにより競争に負けた種が枯れてしまう,
ということも起きます。
良い相性の樹種同士を見定めて混ぜて植えてあげれば,樹木の成長量が高まり,森全体の炭素固定量や生物多様性を向上させることが可能かもしれません。
それでは,具体的に,異なる種の樹木同士の相性を決める要因ってなんでしょう?
実はまだよく分からないことばかりです。
世界中の研究者が協力して作ったのがTreeDivNetという実験林のネットワーク。
世界中の様々な気候条件の土地に約100万本以上の樹木が植えられ,様々な樹種構成,種数の人工林が作られました1。
そこで植えられた樹木の成長を観測し,「どのような条件で樹木同士が競争,助け合いをするのか」を明らかにしようとしています。
気が合う,いや,木が合う相性を見つける研究が世界中で展開されています。
まさに樹木の縁結びの研究ですね。
耐陰性とは光が少ない環境で成長できる性質のことです。
例えば,マツは成長に多くの光を要する非耐陰性樹種ですが,ブナは比較的暗い環境でも育つ耐陰性樹種です。
そして,一般的に,この耐陰性の度合いは樹木の成長速度と反比例するので,耐陰性の低いマツはブナよりも早く成長します。
その結果,成長が早い樹種と遅い樹種を混ぜて植えると時間が経つにつれて樹高に差が生まれ,森林上層には成長の早い樹種,下層には成長の遅い樹種で占められる階層構造ができます。
成長の早い樹種だけの単純林で階層構造ができると,成長が遅れた下層の樹木は光を十分に獲得できずに枯死してしまいますが,耐陰性樹種であれば暗い環境でも成長できます。
この階層構造ができることによって,より多くの葉が空間に配置され,森全体の光の利用効率が高まり,その結果,森全体の生産性が高まる,
という流れです。
さて,今回は樹種同士の相性を考える上で「耐陰性」という視点を紹介しましたが,
森全体の生態系機能を高める樹種の相性には他にどんな要因が絡んでいるでしょうか?
また,
一部の樹種の組合せしか検証していない実験林の結果を用いて,
世界中のその他何万もの樹種同士の相性をどうやって予測できるのでしょうか?
また次回以降,このような疑問について触れていきます。
以上,”だい”でした。
参考:
- A. Paquette et al., A million and more trees for science. Nature Ecology and Evolution. 2 (2018), pp. 763–766.
- L. J. Williams, A. Paquette, J. Cavender-Bares, C. Messier, P. B. Reich, Spatial complementarity in tree crowns explains overyielding in species mixtures. Nature Ecology and Evolution. 1 (2017), doi:10.1038/s41559-016-0063.
[…] さて,前回の記事では,「木の相性」の話を取り上げ,「相性の良い樹種を混ぜて植栽すると森全体の成長が促進される」ことを紹介しました。 […]
[…] 「森林の樹木多様性が高いと森林の生産性も高まる」現象が報告されています(以前の関連記事)。 […]
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